― 速くなった。でも「楽」になったわけじゃない

はじめに|AIで仕事は変わった。でも誤解も増えた

AI、すごいですよね。
便利とか効率化とか、もうその次元を超えて
「生活そのものが変わった」と感じている人も多いと思います。

僕自身、

  • iPhoneアプリの個人開発
  • アパレルブランド(choco-rail)の運営
  • ブログ・Web制作

この全部を、毎日AIと一緒に回しています

ただ、正直に言うと——
「楽になったか?」と聞かれると、答えはNO

むしろ実感はこうです。

  • 楽ではない
  • ただし、異常なほど速い

今回は、
成功談でもノウハウ集でもありません。

2025年12月現在、
AIと“現役で”個人開発を回している途中の、
そのままの実録
を書き残します。


第1章|AIに期待していた幻想(そして最初の挫折)

最初にAIでアプリ開発を試したとき、
正直こう思っていました。

「一瞬でアプリ完成!
俺はもうコード書かなくていい!」

YouTubeやニュースでよく見る、

  • 「AIで◯◯の職業が消える」
  • 「CLIを使えば素人でもアプリが作れる」

そんな言葉を、
どこか本気で信じていたんです。

結果はどうなったか。

「違う、そうじゃない」
が無限に発生する地獄

気づけば僕は、
鈴木雅之の世界に飲み込まれていました。

修正しても修正しても、
意図はズレる。
設計は歪む。
完成した“風”の何かが出来上がる。


第2章|2025年現在、実際にAIに任せている作業

今、メインで使っているAIはこの3つです。

  • ChatGPT 5.2
  • GPT-5.2 Codex Max CLI
  • Gemini(第三の視点)

基本の流れ

  1. ChatGPTと壁打ち
     → 要件整理・ロードマップ作成
  2. Codex用プロンプトを生成
     → 雛形コード・構造を吐かせる
  3. 生成コードを人間が検証・修正
  4. 行き詰まったらGeminiに相談
     → 視点の切り替え・全体調整

AIに任せている範囲

  • 雛形コード生成
  • 単純ロジック
  • 設定ファイルの叩き台
  • 文言・説明文の下書き

完成までは絶対に任せません。

最終判断と責任は、
必ず人間が持ちます。

なぜか?
それが次の章です。


第3章|AIに“絶対に任せてはいけなかった”領域

① 設計判断

AIは全体を見通して完走する意識を持ちません

将来の拡張や、
後からのパッチ前提設計など、
人間なら当然考える余白を残さず
「今、動く完成形」を作りに行きます。

速い。
でも雑音がない分、怖い。


② Apple審査・ストア提出対応

App Store Connectの審査対応は、
体験の蓄積がものを言う世界です。

  • 引っかかりやすいポイント
  • 後で地獄を見る設定
  • 最近変わったUIや文言

AIはここをライブ感覚で保持しません

言われた通りに入力すると、
後工程で詰むことも多い。


③ UI / UXの最終判断

AIの提案は「平均点」が高い。

でも、
あなたのアプリに最適とは限らない

実機で触ると、
「これ、誤タップ製造機じゃん…」
ということは普通に起きます。


④ 「この挙動でOKか?」の判断

ChatGPTの

  • 「大丈夫です!」
  • 「これで完璧です!」

——これはジゴロの甘い囁きです。

彼らは動作を見ていない
コード上の整合性を見ているだけ。

責任を取るのは、
いつも人間です。


第4章|それでも、圧倒的に速くなったのは事実

最大の恩恵は調査時間の短縮です。

  • 仕様調査
  • 前例確認
  • バグ原因の洗い出し

人間の比ではありません。

試行回数を、
異常なレベルまで増やせる

失敗は苦痛ではなく、
次の一手の材料になります。


実際の生活変化

僕が開発に使える時間は、

  • アパレル業務終了後
  • 夕飯を作るまでの 4〜5時間

それでも、

  • 2週間未満でアプリ2本審査通過
  • Webサイト制作:1.5日

かつてフル手打ちだった頃なら、
確実に1〜2週間コースです。

単純計算で5〜10倍速

しかも、
ちゃんと寝られる生活。

これはAI以前には、
考えられませんでした。


第5章|それでも「楽」ではない理由

AIは、

  • 疲れない
  • 速い
  • 不機嫌にならない

それでも楽ではない。

理由はカンタンです。

判断と責任の量は、1mmも減っていない

むしろ、

  • 判断回数
  • チェック項目
  • 責任の重さ

全部、増えています。


第6章|2025年時点での役割分担(結論)

AIの役割

  • 速さ
  • 仕事量
  • 試行回数

人間の役割

  • 判断
  • 責任
  • 美意識

まとめ|これからAIで個人開発を始める人へ

AIは魔法ではありません。
思考を捨てて甘々ゾンビになれる存在でもない。

でも、
もうAIのない時代には戻れない

AIをうまく使っている人ほど、
実は「人間であること」を
より強く求められている気がします。

時に相棒で、
時に部下で、
時に哲学を突きつけてくる存在。

文化はまだ始まったばかり。
僕自身も、まだ試行錯誤の途中です。