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■ 理由とスタート
息子が高校受験を迎えた。
この出来事は、想像以上に自分の思考を支配した。
親として、頭の中が見事なまでに「受験一色」になる。
そんなタイミングで、iOSアプリ開発がちょうど一区切りついていた。
そして自然とこう考えるようになった。
「もっと自由で、もっと高度で、もっと人の役に立つものを作りたい」
直前にリリースしていたのは
『CH-OCR|行政の手紙を読みやすく』。
※『CH-OCR|行政の手紙を読みやすく』についてはこちら
AI+OCRという技術を実用レベルで形にできたことで、
「AIをどう使えば人の助けになるのか」がより明確になった。
教育分野を見渡すと、AIによる答案添削システムはすでに多く存在している。
しかし、
✔ 成績データを統合的に扱うもの
✔ 面談資料を自動生成するもの
✔ 講師の業務時間を直接削減するもの
こうした領域には、意外なほど解決策が少なかった。
そこでひとつの結論に至った。
AIの進化段階において、最も価値が高いのは
「業務時間の短縮」 と 「作業のサポート」 ではないか。
ここから TENsNAP の開発が始まった。
■ 開発環境
今回の開発は、ある意味かなり現代的だった。
ChatGPT と Gemini を行き来しながら設計を練り、
Codex CLI と Antigravity を適材適所で活用。
それぞれの AI の得意分野を活かす、
いわば AIオーケストレーション型開発。
※AIオーケストレーションについての記事はこちら
iPhoneアプリ個人開発のスタートをAIオーケストレーションで高速化してみた話(2026年1月現在)
個人開発だからこそできたことがある。
✔ 最新技術を即採用
✔ 理想と現実のズレによる仕様変更を即断
✔ 無駄な会議ゼロ
結果として、約1ヶ月という短期間で完成に至った。
さらに重要だったのは料金設計。
初期費用 50,000円
月額 9,800円
この価格帯は、個人開発だからこそ実現できた部分が大きい。
インフラは安全性・安定性の高いクラウドサーバーを採用。
登録画像などは分離保存し、一定期間で削除する安全設計とした。
■ こだわったポイント
◯ 営業レス設計
まず最初にこだわったのはここ。
✔ 営業されない
✔ 気軽に始められる
✔ いつでも止められる
導入の心理的ハードルを徹底的に下げた。
◯ マニュアルのいらないUI/UX
理想はシンプル。
「説明しなくても使える」
教育現場は忙しい。
複雑な操作説明は、それだけで障壁になる。
◯ AIの役割の明確化
TENsNAP は「採点システム」ではない。
採点は講師が行う。
なぜなら、採点は単なる作業ではなく、
講師にとって極めて重要な 見抜きポイント だからだ。
AIはそこを奪わない。
AIが担うのは、
✔ 成長率の分析
✔ 弱点単元の抽出
✔ 総評生成
✔ 資料作成補助
つまり 指導支援領域。
◯ PDF一括生成
期間別・教科別にまとめて生成し、
そのまま面談資料として出力できる設計にした。
■ 出来上がったもの
TENsNAP の中核機能はこうなった。
✔ Omniスキャン
順番・天地・見開きを気にせず放り込める
✔ 高速答案処理
問題用紙データをロックし、生徒答案を連続投入可能
✔ 理解度スコア
単なる点数ではなく、成長と弱点を可視化
✔ やさしい分析資料
面談で一目で伝わるアウトプット
ちなみに妻の第一声はこうだった。
「これほど分かりやすい資料を出してくる塾はない」
開発者として、かなり嬉しい評価だった。
■ 安全面への設計思想
✔ Google認証によるパスワードレスログイン
✔ メールアドレス非保存設計
✔ 一定期間経過による画像自然消去
✔ 退会後のデータ自動消去
✔ 高度な暗号処理
✔ 国内アクセス限定
利便性と安全性は常にトレードオフ。
その中で、実用と防御のバランスを追求した。
■ 苦労したポイント
安全性を高めた結果、
仕組みは想像以上に複雑になった。
✔ クラウド環境と開発環境の差異
✔ 海外サービスの高速UI変更
✔ 情報の断片化
そして最大の精神的ダメージはこれ。
デバッグのために
息子のヤバい点数を何度もスキャンする虚しさ。
開発者あるあるかもしれない。
■ まとめ
「SaaSは死んだ」
そんな刺激的な記事タイトルをよく見かける。
しかし多くの場合、それは
AIが単体で代替可能な領域 の話だ。
AIとユーザーを適切につなぐシステムは、
むしろこれから重要性が増していく。
今回の開発で強く感じたのはこれだ。
✔ 個人開発でも十分な規模のシステム構築は可能
✔ AIエージェントは強力な開発パートナーになる
✔ ただし最終確認は人間の目が絶対に必要
大手開発とは違う強みもある。
✔ 身軽さ
✔ 意思決定速度
✔ 独自性
そして結局、最も重要なのはここに尽きる。
「何を作るか」ではなく
「誰のために、どんな助けになるか」
手段は時代と共に変わる。
価値の本質は、変わらない。


