
貧しい夫は、美しい髪の妻のために、綺麗な髪飾りをプレゼントしようと、大切にしていた金時計を売りました。
妻は夫が大切にしている金時計につけるための、美しい鎖をプレゼントしようと、自分の美しい髪を売りました。
どちらのプレゼントも意味をなさない物になってしまいましたが、ふたりの心は温かく、幸せでした。
その頃、貧しい夫から金時計を買った時計店の店主は、ショーケースに入れるため、丹念にその金時計を磨いていました。その店主の手に光る金時計を、その息子は食い入るように見入っています。
それは決して高価な時計ではなく、また豪華な装飾が施された代物でもありません。しかし、丁寧に作られたその金時計に、店主の息子は職人の真っ直ぐな心に触れた気がしていたのです。それまで息子は長いこと、父親の仕事を継ぐべきか、自分の道を歩むべきか悩んでいましたが、その素晴らしい金時計の仕事を見て、店を継ぐ決心をしたのです。
店主は息子の決断に涙を流して喜び、彼を都の時計職人の元へと、修行に行かせました。
その頃、先の貧しい妻から美しい髪の毛を買った床屋の主人は、その美しい髪でカツラを作っていました。
それはご近所に住む貧しいご婦人のためでした。ご婦人は近くで起きた火事が起きた時、炎の中に取り残されてしまった幼い子供を助けるために、燃え盛る家の中に飛び込みました。我が子でもない幼い命を救い出し、ふたりとも命は助かりましたが、ご婦人の髪はボロボロにやけおちてしまったのです。
ご婦人は貧しく、カツラを買うことも、それを隠す帽子を用意することも出来ませんでした。床屋の主人はその時の救出劇に心を打たれ、貧しいご婦人に美しいカツラをプレゼントしたのです。
ご婦人は床屋の主人の優しさに感動し、何度も何度もお礼の言葉を繰り返し、涙を流して喜びました。その母の姿を見ていた娘は、慎ましくも真っ直ぐに生きる母を助けたいと、都に働きに出る決心をします。ご婦人は我が娘の気持ちにも強く心を打たれ、彼女を都へと送り出しました。
数年後、京都でひとつの愛が芽生えます。
時計屋の息子と、美しく優しいご婦人の娘が出逢い、結ばれたのです。
時計屋の息子は、美しい髪の妻に綺麗な髪飾りをプレゼントしようと、大切にしていた金時計を売りました。それはあの時に見た素敵な金時計をもして作った、自分の最初の自信作で、それはとても大切にしている物でした。その妻は、夫が大切にしている金時計につけるための、美しい鎖をプレゼントするために、自分の大切な美しい髪を売ったのです。
どちらのプレゼントも意味をなさない物になってしまいましたが、ふたりの心は温かく、幸せでした。
その頃、貧しい夫から金時計を買った時計店の店主は、ショーケースに入れるため、丹念にその金時計を磨いて───