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Episode

禍々☆パラディン ~初恋は実らない方がいい~

第六章 メルキアのヴァンパイア

【幕間Ⅶ】 五人五色

 エリンとユニの赤豹姉妹が帰って来て三日、姉妹の妙な勘違いからの出会いだったせいか、どこかスタルジャと姉妹がぎこちないような気がしていた(ソフィアとティフォは全く通常運転)。初日より二日目と、少しずつ馴染んでいるようには見えるが、やはりちと心配だ。

 婚約者が五人。
 ソフィアとティフォから始まり、一夫多妻の道へ自然と流れてしまったが、俺自身ひとりの女性とでも、ちゃんと順序だてて、愛を育んだ事があったかと言えば皆無だ。それに姉妹にはまだ、俺がどんな運命を背負っているのか、ちゃんと話せていない。

─── オルネアの聖騎士パラディン

 ティフォが普通の人類ではない事は、ふたりとも自然と感じているようだが、ソフィアの正体も俺の加護についてもちゃんとは話していない。予定ではもう少し早く、実家に着く予定だったから、その後に姉妹と再会して、婚約を継続するか破棄するかを決めてもらうつもりだったしなぁ。ダルンとシリルで、思わぬ時間を食ってしまった。

 今はラミリアの妨害(?)で、加護はバグったままだが、ソフィアとの契約がある以上、この先はどんな事があるか分からない。もし大きな危険を伴う事になった時、彼女達五人に悲しい思いはさせたくないし、全員の絆はしっかりと深めておかないとな。

「うん、やっぱり俺が責任を持ってしっかりしなきゃ! 取り敢えずはスタルジャと姉妹の仲を取り持って、必要なら全てを話すしかない!」

 と、言うわけで今日は皆んなの様子を見てみようと思う。

 ※ 

 まずはスタルジャと姉妹の様子だな。今日は朝から三人で、平原の方にある丘で修練を積んでいると聞いた、俺は気配を消して三人の元へ行くとしよう。ミトンの加護『蜘蛛の王』を使い、小蜘蛛斥候団に案内してもらう。

 お、いたいた。ん? なんか三人で座り込んで話してるな。良かった、案外楽しそうにやってるじゃないか、うんうん。もう少し近付いて話を聞いてみよっと♪

「あはははっ、やっぱ赤豹族もそうなんだ〜」
「そうそう。ユニなんてさぁ、幼い頃にペイトン爺の倉庫で空き箱に入り込んでね、二回も出荷されちゃったのよ?」
「もうその話はいいの〜! それにお姉ちゃんだって出荷されたの~」
「あ〜、でも狭い所に入ると安心するって、ちょっと分かるかも」
「あはっ、スタちゃんもかー」

 おお、普段はちょっと硬い喋り方のエリンが、普通の女の子みたいに喋ってるぞ⁉︎なんかちょっと妬けてくるなこれは。
 とは言え、仲よさそうで何より、盗み聞きも良くないしな、ここを離れ───

「ランドエルフもさ、鼻いいんでしょ? ねえねえ、アル様のってどう思う?」

 こ、これは聞き捨てならねえぞ⁉︎ どどど、どーしよう、臭いとか思われてたらどーしよう!
 今後まともに話せなくなるかも知れない!

「えへへ、えっとね、私はねぇ〜。アルの髪の匂いが好きだなぁ〜♪ 彼さぁ、髪には髪用の石鹸を調合してるじゃない? あの柑橘っぽい香りがさぁ、近くで振り返った時とか、ふわぁ〜ってね。えへへ」
「「わかるぅ〜♪」」
「特に冬とか乾燥してる時の、夕方くらいの匂いがね、ちょっとアルの匂いも混ざってむはぁってなっちゃう。あ、私変態っぽいかなぁ」
「大丈夫よスタ。あたしも同じだし、ユニはもっと重症だから」
「べべつに重症なんかじゃないの!」

 良かった……。でも何だろうムズムズするな、こういう自分の匂いの話をされるってのは。

「でも、髪用にわざわざ石鹸作るってすごいの! 赤豹の集落にいた時なんか、全身石鹸だったから、アル様と旅した時に初めて使ってびっくりしちゃったの。もう普通の石鹸だとゴワゴワしてダメになっちゃった♪」
「タイロンと三人旅の時は、ユニ、街につく度に雑貨屋で石鹸探してたもんね」
「全然置いてないんだよ⁉︎ 酷くない? 獣人族って毛だらけの人が多いの、何でもっとこう色気出さないのかなぁ。タイロンだってさ、清潔好きだけど石鹸強すぎて、時々粉吹いてたの」
「あはは、宿屋の主人に『あんた脱皮中かい』って勘違いされてたね。粉吹いてるだけなんだけどね、財布に入れるとお金が貯まるからとか言って、ねだられてたな」

 タイロン、肌弱かったのか。今度会ったらクリームでも贈ってやろう。

「で? エリンはどうなの? アルの匂い」
「うへ、でへへぇ。あたしはさ、やっぱりお風呂入る直前の、い、一番汗の匂いがする時だ。シャツの襟元えりもととか、も、潜り込みたくなる。でへへぇ〜」
「あははは、お姉ちゃんキモいの。あはは」
「う、うるさいユニ! あ、でもね、汗いっぱいかいた時じゃダメなんだ、逆にアル様自身の匂いが薄れるって言うかなぁ。普通に一日過ごした時のが濃いい」
「きゃははは、へぐっ、それ変態なの、お姉ちゃん、ぎゃははは、ひょぐっ」
「ユニ、あんた笑い過ぎて、横隔膜イッてるわよ?」
「くすくす、ユニちゃんって時々毒舌だよね。でも、シャツの襟元に潜り込む発想はなかったなぁ〜。私も今度近づいてみよっと」

 思い返してみれば、確かにエリンのそんな視線を感じてた気がする。チラ見されるって意外と気がつくんだよな。うわ、気まずいなこれ、襟元汚れとかも見られてるって事だろ⁉︎

「そう言うユニちゃんはどうなの? 重症さんなんでしょ」
「え? 私は別に普通なの〜♪ んとね、ブーツ脱いだ時の匂いなの!」
「「重症だ」」
「すっごく安心するんだ♪ アル様の体調が全部分かるっていうか、お酒飲み過ぎて代謝下がってる時とか、そら豆みたいな匂いがするニャ。ああ、放っておけない……みたいになるの」
「「末期だ」」
「そ、そう言えばあんた、時々玄関から戻ってきた時に、上唇が持ち上がってる事あったけどまさか……」
「えっ! 顔に出てた⁉︎」
「あ、猫って強い匂い嗅いだ時にそんな顔するけど、ユニちゃん達もそうなんだ⁉︎ って、そっちじゃない、嗅いでたの⁉︎ 直で⁉︎」
「ししし、してない……よ?」
「ユニ。尻尾が山形に持ち上がってんよ。やったねこれは、やりやがったね。なんて事なの、妹が一線超えちゃったわ」

 何だろう、パンツ見られたとかより恥ずかしいこの気持ちは何だろう? ユニには全てを見透かされていたのか⁉︎ 代謝まで!?

「でもさ、貴方もいい匂いするわよね」
「えっ? 私の匂い?」
「そうそう、スタちゃんはなんて言うのかな。胸がこう、デュワワワって言うか、ニュルワッって言う感じなの」
「ど、どういう状態よそれ。あ、でも昔から動物にはよく懐かれてたし、猫はよく寄って来るよ?」

 そう言えば確かにランドエルフって、独特なハーブっぽい匂いがあるな。最初ロゥトに着いた時は、みんなコロンでもつけてるのかと思ったくらいだし。スタルジャもそんな匂いがするし、猫がよく集まってたけど、あれって匂いのせいだったのか?

「ちょっと近くで嗅がせてよ」
「ええっ⁉︎ ちょっと恥ずかしいなぁ、少しだけだよエリン、少しだけ」
「へへへ、同じ婚約者仲間なんだから、恥ずかしがるなって〜♪ どれどれ……くんかくんか」
「やっ! ちょっと、くすぐったいって、嗅ぎ過ぎ、嗅ぎ過ぎ‼︎」

 ごろんっ!

「へ? ど、どうしたのエリン」
「ぐるみゃあぉ、ああぉ……ん」

 スタルジャの耳の辺りを嗅いでいたエリンが、突如仰向けに転がってスタルジャの膝に頭を乗せゴロゴロし出した。

「お、お姉ちゃん、めっ! 赤豹族族長の娘なんだよ! こんな所でそんな猫っ気出しちゃダメだって!」
「ゴロロロン、ゴロロロン、ゴロロロン」

 うわ、すっごい喉鳴ってる! え? あんな猫と同じ音出せるもんだったの⁉︎ てか、あれってマタタビ嗅いだ時の猫っぽくねぇか? スタルジャはマタタビだったのか⁉︎
 最初は戸惑ってたスタルジャも、流石の適応力の高さか、エリンの喉元とかを撫で回し始めた。

「ちょ……ね、ねえ、私もスタちゃんの匂い嗅いでみたいの……!」
「くすくす、ちょっとだけだよ?」

 すん……すんすん……

「ぐらなぁおう……ぐるるみゃあおぅ」

─── ゴロロロン、ゴロロロン、ゴロロロン
─── ゴロロロロン、ゴロロ……ゴロロロン

 即座に完落ちしたユニ、スタルジャはふふふと目を細めて、二人の体を撫で撫でしていた。くそっ、俺もあれやってみたい、ふさふさの所なでなでしてみたい……ッ‼︎

 ……とまあ、三人は凄く仲良く(中毒性含め)やって行けそうだし、ここはもういいか。ソフィアとティフォは問題ないだろうけど、なんかこの間はローゼンにヤキモチ焼いたりしてたからな。二人の様子も見てみるか。

 確かティフォは鬼族の集落で何かやってたし、ソフィアとローゼンは沢の方に行ってたな。次はここから近いティフォの方に行ってみよう。

 ※ ※ ※

「ん、回復よぉーい、かまえぇッ‼︎」
「「「オウッ‼︎」」」

 え? これ何やってんの⁉︎ 今回復って言ってたのに、屈強な鬼達が正拳突き構えてんだけど。

「いーか、おまえらこのクソども! 回復のしんずいは、コシの回転から、いかにこぶしに全たいじゅーをのせるか……だッ‼︎」
「「「オウサッ‼︎」」」
「足のおやゆびで、だいちをつかめッ! すべてのバネを、コシの回転にしゅーやくしろッ! わかったか、このヤロウッ‼︎」
「「「オウサッ‼︎」」」
「オラァッ‼︎」

 ドゴォッ……‼︎

「ぶべらばッ⁉︎」
「てめぇ、オズノ、このやろう! そのふぬけたコシのじゅーしんはなんだ! おままごとやってんじゃねーんだぞッ⁉︎ ええ?」
「す、すすす、すいやせんです師父!
─── って、あれ……か、肩こりが治ってる! 万年肩こりで辛かった肩が嘘みてぇになおってやがるぜ⁉︎」
「「「おおおお……⁉︎」」」
「ふん、オズノこのやろう、このあたしのちょーぜつテク、きさまのスズメの涙ほどの脳にも、りかいできたのか、ええおい?」
「ご、ごちそうさまでやんすッ‼︎」
「りかいできたなら、もどれ。いーか、おまえら、丹田のちゅーしんで愛をさけべ、このブタどもがぁっ」
「「「うおお、師父! 師父! 師父!」」」

─── 何これ?

 何かティフォは妖術の新しい方式を見つけたとか、そんな事を言ってはいたけど……何これ?

「いーかおまえら、せんじょーでは、やわな回復魔術なんざ、くそのやくにもたたねーんだ! とまったしんぞーは、なぐり治せ! とびちった、のーずいは、けり治せ!」
「「「オウサッ‼︎」」」
「どんなにぶざまでも、さいごにたってた者の勝ち、だ! おうけい?」
「「「オウサッ‼︎」」」
「おまえらのよーじゅつは、おまえらじしんの、しんかくか、にあーるッ! だが、にくたいをもつ者には、ほんとーの神のちからは、ない。それにたえうるよーに、魔力のほんりゅーを、ほんのーで止めてるから、だ」
「「「オウサッ‼︎」」」
「それは、とらんすじょーたい、でもおなじ。さらに、とらんすじょーたいでは、ちめー的にスキがあーるッ! それがおまえらの、さいだいの、弱点ッ!」
「「「…………さー」」」

 まあ、その通りだな。半分を奇跡に近い事象操作に頼れる分、魔力効率はピカイチだが、いかんせん意識レベルが下がるのは痛い。

「おちこむな、このへっぷりむしどもがッ! だからこそ、いつでも奇跡をひきだせるよーに、もっともあつかいやすい、回復のじゅつを、かんじょーで、あやつるッ!」
「「「オウサッ‼︎」」」

 なるほど、攻撃魔術だと本能的にリミットを掛けてしまいやすいが、回復魔術だとやり過ぎる事がないからリミットが掛かりにくい。だからこそ、殴りつけるような強い意識下で、全力で回復系統の妖術を放つ修練か。

 殴れば怪我もするが、それを上回る回復力を同時に打ち込めば問題ない。やがてそれに慣れてくれば、回復力を高めつつ、攻撃にも力を割ける。そうして、攻撃系統の妖術も、素で引き出せるようになるわけだ。
 なにあの子、やっぱ天才じゃない!

「しかーし、ふだんとかわりばえのない相手じゃ、やるきもおきんだろーう。今日はとくべつに、げすとをよんであーる!」
「おほ、ティフォ殿、ワタクシの出番ですか?」

 セバスチャン⁉︎ あいつこんな所で何してんだ?

「セバはオニイチャのマジ殴り、うけたな? どーかんじた?」
「ワタクシはソゥバ探しと共に、世界の強者達と闘ってまいりました。しかし、ワタクシ盾の上から、素手で倒されたのは初めてでした。まさにハートブレイク‼︎ いいものでした、あれは、いいものでした。ワタクシ、大変に感じ入ってございますぞ!」
「このよーに、このエムひげは、がんじょーだ! おもうぞんぶん、なぐりいやせッ‼︎」
「「「オウサッ‼︎」」」

「むほほっ、鬼族の屈強な男たち……相手にとって……不足ナシッ‼︎」

 あああ、鬼達がわらわらと囲んで……。ああ、盾が奪い取られて……、もうタコ殴りだ……。でも何だろう、七三分けが乱れ舞い、髭を血に染めながら、あいつ笑ってやがる。
 その恍惚の表情が、俺にはなんだか……。

「あいつ……気持ち悪いな」

 ティフォは俺の想像以上に生活を楽しんでいるようだ。俺はその場をそっと去る事にした。

 ※ ※ ※

 最後にソフィアの様子だが、確かローゼンと深い話をするとか何とか言ってたな。また小蜘蛛の力を借りて捜索すると、ふたりは鬼族の集落から少し外れた、林の中にいる事が分かった。

 ローゼンは別に婚約者でも何でもないが、ソフィアは一時彼女に妬いていたし、この地域にいる間は仲良くしてもらいたい。
 それに気のせいかな、俺の実家に近づくにつれ、ソフィアが少しぎこちなくなってる気もしてるんだよなぁ。

 お、いたいた。ふたりは樹々が少し拓けて、穏やかな木漏れ日の当たる場所に、テーブルセットを置いてお茶会をしている。流石は超年長組、落ち着いた雰囲気で談笑をしている雰囲気が、なんだか大人っぽく見えた。て言うか、ローゼンはソフィアよりも更に年上なんだよなぁ。髪型とそばかすのせいか、彼女の方が若く見えるくらいだ。

「なるほど、それで冒険者をしていたですか」
「ええ、最初は大変でした。人間達の様子は、知識では持ってましたけど、実際そこに加わると、分からない常識なんか沢山ありましたからね」
「ふーむ、私は今でもそこらの自信がないのです」
「ふふふ、やってみればすぐに慣れますよ。人の世は移り変わりが激しいですから、少し離れると見過ごす事が多くなっちゃいますけどね」

 うん、俺だって里から出てしばらくは、どうすりゃいいのか分かんない事だらけだったもんな。ソフィアが居てくれたお陰で何とかなったけど、確かに一人だったらキツかったろう。お金で焦った時期は、本当に心細かったし。

「所でローゼンさんは、今まで恋人とかはいらっしゃらなかったんですか?」
「う、それを私に聞くですか? 以前アルさんの夢の世界でお話しした通りなのです。初恋ですら自覚出来ないポンコツなのですよ? デートひとつしたこたぁないのです」
「私だってそうですよ。今でこそアルくんの婚約者ですけど、四十九億年余りそんなもんでしたから。今だって、彼に背負わせてしまった運命が申し訳なくて、足踏みしちゃってます」

 んん、これ以上は聞いちゃいけないな。もうすぐで俺の運命も分かるんだし、ソフィアの気持ちを不意にしたくはないしな。

「なかなか、思う通りに行かないのが地上ってやつですかね。それこそが神の求める世界なのかも知れませんが、仕方がないのです。参考までになのですが、アルさんのどこらへんに惚れたです?」

─── ん⁉︎

「フフフ、最初はね、変な子だなぁとしか思わなかったんですよ。でも、彼が私に手を差し伸べてくれたのが始まりでした。それはさっき話した通りです。色々あって彼は覚えていないようですけどね」

 確かそんな事、前にも言ってたような。ああ、ハリード自治領の宿屋で、初めてソフィアから正体を明かされた時だったっけな。俺の五歳以前の記憶か。でも、俺の持ってる記憶だと、ソフィアと契約した時、その朝初めて会ったはずなんだけどな。

「その後の再会は十年後なんですよね? 人って直ぐに大きくなって、変わって、死んでしまうじゃないですか……あ、ごめんなさい、失言なのです。その、再会した時、凄く変わってて戸惑ったとかはなかったです?」

「ふふふ、そりゃあ驚きましたよー♪  だってあんなに可愛い男の子が、真っ黒い髑髏どくろ騎士ですよ? 最初は気が付かなくて、敵だと思って斬りかかりましたからね、私」
「ええッ⁉︎ 本契約まだだったですよね⁉︎ それでよくアルさん生き残ったですね!」
「私も驚きでしたよ。てっきりその辺の盗賊団の団長だと思っていたら、私の剣も神威も見切られたんですから」

 あったなぁ、そんな事。あのままやり合ってたら、多分俺死んでたけどね。

「あの強さは加護だけじゃなかったんですね」
「そりゃあ剣聖の養父。軍神、炎槌、闇神、癒神から、毎日数回死ぬ程の訓練受けて来たみたいですからね。一合剣を重ね合っただけで、邪神かなんかかと思いましたもん。私も不安定な存在でしたから、流石にヤバかったですね♪」
「なおさら、アルさんが今ご存命なのが信じ難い生い立ちなのです。でも、そんな再会でよくまたくっついたですね」
「その時、彼は他の人間を救おうとしてたんですけど、その救いたいって気持ちとか、器の大きさにドキドキしちゃったんですよ。で、兜を取った時に直ぐ彼だと分かって……」
「惚れ直したと?」
「デュフフ」

 い、いかん、盗み聞きはダメだと思ったのに、また足を止めてたよ。
 よし、早々に立ち去───

「その恋路を再燃させるべく、参考にしていたのが、これらの書物です♪」

 ドサァ……ッ!

「ほぉ〜、これは、神界経由のものですね? なになに『ラブコメあいうえお』に『今日から始めるラッキースケベ☆トラップ』と」
「最初は表紙が可愛いな〜って、手に取ってみたらどハマりでしたよ。特にこの『本当にあった悶絶夜話』なんかは……」
「ふおお〜! これは何やらたぎるものがあるですね、お下げが浮きっぱなしなのです!」
「ほらほら、これなんて確実にノーリスクで既成事実きせーじじつ狙えそうじゃないですか、どさくさに紛れて」
「これも凄いのです! これはなのです!」
「ふふふ、やっぱりローゼンさんはこちら側でしたかぁ〜☆ 宜しければ私とこの後……。
あ、おや、天界から急な通信が! 失礼しますねッ‼︎」

 ゴ ゴ ゴゴ ゴ ゴ…………

「ソフィアァァッ! それ系は辞めるって約束しただろ⁉︎ ぬ? もういない⁉︎」

 ダダダダダ……

「待ちなさいソフィ! 怒らないから待ちなさいッ‼︎」

─── オコルニキマッテルジャナイデスカー ヤーダァー!

「もう、そういう所ばっかり知恵つけて! 待つんだソフィーッ‼︎」

 こうして、アルフォンスが危惧した、五人の婚約者達の人間模様は、ただの取り越し苦労として決着をみた。
 スタルジャと赤豹姉妹の仲は日に日に深まり、ティフォは鬼族に新たな力を、そしてソフィアとローゼンは『お得』に堕ちていった。この日のソフィアとアルフォンスの追走劇は、メルキア公国において、地上最高速度を記録したが知覚できた者はなかった。

「おお……これも凄いのです! お得なのです!」

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